離れるということ1(Dr.コトーのモデル「Dr.瀬戸上の離島診療所日記」と小野田寛郎さんの言葉から)
瀬戸上健二郎先生という、Dr.コトーのモデルとなったお医者さんが書かれた「Dr.瀬戸上の離島診療所日記」に、「世界の中心はどこ?」という節があり、「九州や本州から見れば、取るに足らないちっぽけな離島かもしれないが、視点をかえれば世界の見え方は逆転する。離島に住む人々にとっては、この場所がすべての中心なのである。」とある。
先生は、東シナ海に浮かぶ甑島列島の最南端にある鹿児島県下甑村(現在は、薩摩川内市下甑町)手打(てうち)診療所で28年間離島医療にご尽力された方であるが、その著書を読んでいると、まるでコトー先生が書かれているのではないかと錯覚するほど、下甑島とその島民への視線があたたかい。
例えば、「血の通わない統計の数字では、離島に暮らす人々の数は、日本の総人口の1パーセントにも満たないかもしれない。だからと言って、離島の住民をないがしろにしていいということにはならない。」とも書かれている。
ところで、この離島(りとう)という言葉が出来たのは、同著やシマダス((財)日本離島センター発行)によれば、昭和28年に成立した「離島振興法」の成立以降であると推測されるようである。
明治24年発行の大辞典「大言海」(大槻文彦編)にも離島(りとう)という言葉は掲載されていないらしい。それまでは、「離れ島」などと呼んでいたようだ。
さて、その「離れるということ」についてである。
以前、テレビで戦後30年間、フィリピンのルバング島で終戦を知らされぬまま、最後の一人まで戦い続けた陸軍少尉・小野田寛郎氏の特集をみたことがある。
その時に、生涯忘れないような言霊が次々と小野田さんの口から出て来たのだが、その中でも特に心に残った話がある。
小野田さんは、、「もう20年以上前であろうか、金属バットで親を殺害するという事件」を聞いて、「戦後日本」の行く末を案じたそうである。その後、日本の現状を見すえ、(財)小野田自然塾の塾長として、将来をになう青少年たちの育成に生涯をかけて、力を注いでおられる。
その小野田さんはテレビでこう話していた。(言葉の詳細は残念ながら忘れてしまった。以下は仰っていた内容である。)「この事件の少年は、どうして家を出なかったのだろう?、どうして、そこまでするぐらいなら、親と離れなかったのだろう?」
そして、「人間、頭にきたりとか、はらわたが煮えくりかえるような出来事は避けられないけれども、しょうがないじゃないですか。でも、そこから離れることはできる。僕なら家を出ていたのにどうして、・・・・・」などと話されていた。
最近のいくつかの凄惨な事件を耳にして、小野田さんの言葉を思い出した。
「どうして離れなかったのだろうか?」
瀬戸上先生も同著に書かれている。「別離や離散など、離れるという言葉には寂しさや悲しさがただよっている。(中略) だが、長年「島」で、いや「離島」で暮らしてきた身としては、まったく気にならないのである。(中略) 「離」という言葉の背景には、ただ距離をとって孤立しているという意味だけでなく、自立している、自主独立の精神も隠されているのではないか。」
数年前に沖縄島で撮影。奥に写っているのは「離島か岬か」。
今になっては記憶にはなく、写真でもよくわからない。
(その2につづく)
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