映画による観光振興のお手本といわれている映画がある。
「ローマの休日」(ウィリアム・ワイラー監督、1953年の作品)である。
オードリー・ヘプバーンがアイス(ジェラード)を手にする「スペイン広場」、子供のようにこわごわと手を入れた「真実の口」、グロゴリー・ペックの小型スクーターで走り抜けるコロシアム、カフェ・グレコ、コロンナ宮殿、パンテオン、それからトレヴィの泉など、ローマの至る所がロケ地になっている。
映画を見ている側からすると、あたかもローマ観光をしている感じである。
調べてみると、やはり深い訳があった。
映画「ローマの休日」は、マーシャルプランによって一時的にドルが凍結されたため、ドルをローマで使ってもらうために映画が製作された一面もあるようである。
ワイラー監督は製作にあたって、ローマですべてロケ撮影をすることを主張したという。
(ロケとスタジオを組み合わせて撮影するのが一般的であった。)
その結果、「ローマの休日」が公開された後、ローマの観光客は急増した。
そして、それ以降今日まで、「ローマの休日」は、ローマの観光資源になっている。
一方、映画「カサブランカ」(マイケル・カーティス監督、1942年の作品)は、第二次大戦におけるモロッコの首都カサブランカが舞台である。
こちらの撮影は、ロケではなく、その全てがハリウッドのスタジオで行われたという。
だから現在、カサブランカに観光に行っても、映画「カサブランカ」を感じることはほとんど出来ないそうである。
それにもかかわらず、映画「カサブランカ」に惹かれて、その地を訪れる人が絶えないというから、世紀を越えた名作映画の舞台であるということは、大きな魅力であるに違いない。
備考:マーシャルプランとは
1947年から始まったアメリカの欧州復興計画。第2次世界大戦で疲弊した西欧諸国の経済復興に大いに貢献した。全欧州を対象にしていたが、反共主義を前提とした。この計画の総援助額は約139億ドルに達したといい、その多くはイギリス、フランス、オランダ、西ドイツ、そしてイタリアの5カ国に供与された。ただ一方で、その援助額の約7割がアメリカの余剰農産物などの購入にあてられアメリカの輸出が拡大したようである。そのためにドルが一時凍結した。
参考資料:山村謙一著「ヨーロッパ映画の旅」
最近のコメント